在外国民のための特例手続
外国にいる大韓民国国民も、出生、婚姻、離婚、死亡等の身分行為が行われた場合には、国内に居住す者と同じように戸籍法(家族関係登録法)による申告をしなければなりません。
「しかしながら、過去の日本統治下では在日コリアンが日本の役所に戸籍の申請をすれば、申請を受理した市町村長は遅滞なく本籍地への
届出書又は申請書を送付しなければならなかったので、日本の役所に届ければ本籍地の戸籍に記載されたのでした。
日本は1945年8月15日に「ポツダム宣言」を受託し降伏した時から、朝鮮半島の統治事務を放棄したことで、日本の役所に戸籍届を出しても、
本籍地へ送付しなくなりました。
1945年8月15日以後の届出は本籍地に記載されなくなったのです。
直接本籍地に届出した人以外、多くの人は本籍地に直接届出をしなかったために、本籍地の戸籍に記載されないままの状態が続きました。
また、その後の朝鮮半島の南北の政治状態の不安定さから、在日コリアンには戸籍の届出を本籍地に送付する余裕もなっかたとも思われます。
このような事情などから、在外国民(特に在日コリアンの場合)は、長い間戸籍整理がされない場合が多い。」
このため、このような在外国民の特殊性を考慮して、「在外国民就籍・戸籍訂正及び戸籍整理に関する特例」を施行しています。
このこの特例法による手続きは、戸籍法(家族関係登録法)による一般手続きに比べ、添付書類が簡単で、その費用を国または地方自治体が
負担しています。
但し、この特例法に申請が可能な在外国民は大韓民国国民として在外国民登録法の規定で在外国民登録されている者に限られています(在外国民登録者)。
在外国民家族関係登録の特例
1.目的
身分登録・公示に関する法は適用されるが、身分関係の変動について、法定期間に申告などの手続きが困難な場合がある。
韓国国内に戸籍をもつことができなくなった在外国民、戸籍があっても実態関係と一致せず、又は身分変動事項を整理できない場合が多かったので、これらの事情を勘案し(いろいろ考え合わせ)
1967年1月16日「在外国民の就籍に関する臨時特例法」制定
1973年6月21日「在外国民就籍・戸籍訂正及び戸籍整理に関する特例法」全面改正
「家族関係登録創設、家族関係登録簿訂正及び家族関係登録簿整理に関する特例法」名称を変更(戸籍法が家族関係登録法に代わったので)
2.特例法の適用範囲
在外国民登録法の規定によって登録された者に限り適用される(特例法2条1項)
家族関係登録法による申告と申請に関する事項のうち、出生、認知、養子縁組、婚姻、死亡などにより登録簿が作成または閉鎖される者の申請についてのみ適用される(特例法3条)
申請において、申請様式と添付書類が簡単で申請手続きも簡便で、在外公館の長の 確認による家族関係登録簿の訂正を認める規定されている
本人の選択で内国人同様に管轄家庭法院又は市(区)・邑・面の長に直接提出できる
3.外国地名の記載と添付書類に関する通則
- 外国の漢字地名の記載(例規第273号3条)
在外公館の長が外国の地名を漢字のみで表記し、ハングル表記しない申告書を受付するときは、漢字地名の横にハングルで( )の中に一緒に記録し、受理して市(区)・邑・面の長に送付し、長は外国地名である漢字を外国の発音どおりハングルで外来語表記法に従い記録する
- 添付書類に関する通則
特例法による申告は申請書に、原則として、各事件本人(当事者)の在外国民登録謄本、居留国の外国人登録謄本又は永住権写し等を添付しなければならい点で一般の申告と異なる
(特例法4条)
申請人と事件本人が異なる場合
事件本人についての書類添付しなければならない
添付書類が外国語の場合
翻訳文が添付されなければならない
申請書に在外国民登録謄本が添付されなければならない場合
在日韓国人の申請では民団長発行の在外国民登録証明をもってこれに代えることができる
特例法による訂正又は整理事項が死亡者に関することである場合
他の添付書類によってその訂正又は整理事項が証明される場合には、在外国民登録謄本を添付しなくてもよい
外国人登録謄本及び永住権の写しはその中の一つのみ添付すればよい、国籍が「朝鮮」と記載されてもよい(在外公館に在外国民登録して韓国国籍変更しても、日本の行政官公署に国籍変更申請せず、国籍表示が「朝鮮」となっているとき発生する)
4.家族関係登録創設許可申請
家族関係登録簿が作成されておらず、又は登録されているか否かあきらでない者が新たに家族関係登録を創設するための申請である
登録されているか否かあきらでない者の場合、登録の有無が判明するまで創設できないのが原則であるが、特例法では、このような場合にも、創設できるようにした。
家族のうち一部のみが在外国民登録をして特例法による要件を備えた場合、その者のみが家族関係登録の創設をすることができる(例規第273号6条)申請人は事件本人である
但し、以北の在籍者の家族関係登録の創設において、申請は、従前の戸籍上の戸主又は家族が各々することができる。
朝鮮戸籍令施行前(1923年6月23日以前)の事実上の夫婦に関して家族関係登録簿が作成されていない場合には、夫婦が同時に家族関係登録簿創設し許可申請をしなければならない。
5.家族関係登録簿訂正許可申請
家族関係登録簿の記録に錯誤又は遺漏があった場合に、発見した利害関係人が訂正する場合である。
これを訂正することで親族法上又は相続法上重大な影響を及ぼしうる事項は、判決によって訂正しなければならない。特例法により訂正できない。
6.家族関係登録簿訂正申請
訂正は、法院の許可を得てするのが原則であるが、特例法上の訂正申請は、登録簿の記録に錯誤又は遺漏の事実が諸般の資料により確認されたときは、在外公館の長が調査確認書を作成し、訂正申請書にこれを添付して、市(区)・邑・面の長に直接送付して訂正する手続きである(特例法第5条1項但書)
7.家族関係登録簿整理申請
出生、認知、養子縁組、婚姻、死亡など登録又は抹消されるならない者が家族関係登録簿が作成、閉鎖又は整理されなかったときには、事件本人その他の家族関係登録簿上の利害関係人の申請によって家族関係登録簿を整理することができる特例手続である。
既に発生した既存の事実関係を尊重し、その事実どおりに家族関係登録簿を整理するための制度である。
行為地法である外国法によって婚姻、離婚、認知、養子縁組などをした場合又は出生地・死亡地である外国で出生・死亡申告などをしたときは、その外国官公署が発行した婚姻などの受理証明書その他これを証明する証書を添付しなければならない
婚姻の場合
妻の家族関係登録簿 婚姻関係証明書
認知の場合
被認知者の家族関係登録簿基本証明書
養子縁組の場合
養子の家族関係登録簿養子縁組関係証明書
それぞれ添付しなければならない(例規第273号12条)
在日韓国人の多くは永住権を有し、日本の役所に届出を行っても、法に義務付けられた申告を韓国の領事館や官公署に行わず放置している人が少ない。
特例法はこのような場合に備えたものである。
特例法は在日韓国人の身分登録に重大な影響を与えている。